2017/09/11

マギー師匠に問え 後編

格納庫を作ったときにも描いたのですが、鉛筆でイラストを描くと職人さんに伝わりやすいし、何よりも自分のイメージの再確認にもなります。

格納庫は野地板と呼ばれる屋根の下地に使う杉板にペンキ塗装を施したものを外壁としていますが、板の張り付け向きを縦にするか?横にするか?で非常に悩みました。格納庫は縦に使っているため、当初は縦イメージだったのですが、いざイラストにしてみると違和感を感じるのです。

そこで『セブンスで絶賛販売中の書籍』のFLAT HOUSEで外壁に木材を使用している物件を探してみると違和感の理由が判明したのです!つまり「縦は倉庫」で「横は住宅」なのです、これはあくまでもイメージであり実情とは異なりますがデザインの基準になると判断。板の向きは横に決まりました。

今の住宅はサイディングと呼ばれる外壁がほとんどです、たぶん劣化しにくいとか、メンテナンスが不要という理由で採用されているのだと思いますし、施主側が面倒な事や維持費の出費を避けたいからと言っているのでしょう。ですが、そういう素材にかぎって温かみも無く、年月が経つにつれてみすぼらしくなるのです。

格納庫は「全て土に還る素材だけで作ってほしい」とお願いして出来上がったものです、こういう素材は年月が経つにつれて味わい深くなり、何よりも建物が生きているかのような温かみを持つのです。10年も経てばペンキが剥がれてくるでしょう、20年すれば何枚かの板が朽ちて外れるでしょう、だけど剥がれたペンキは塗ればいいし、外れた板は付け替えればいい、そしてその状態が醸し出す「生きた家」の雰囲気は作って出せるものではありません。

その理念はアクアリウムと同じで、自然が作り出す雰囲気は自然に習った手法で挑むべき。瞬間接着剤でしかつけられないような場所に自然界で植物は活着しないのです。

私はこのボロアパートで乱立している量産借上げ賃貸物件と戦ってゆく事になるわけですが、居住者様に末長く愛されたのならば、温かみのある生きたアクアリウムも共に愛され続けているはずです。