2016/01/28

セトム

週に一度は妻と外食をしていますが、今日は(回っていない)回転寿司。席に座ってメニューを見ても…あまり食欲が湧いてこない。腹は減っているのだけども楽しくないというか、回転寿司ってこんなもんだったかな?別に味に不満があるのではない、俺にとって回転と言えども寿司は贅沢品だし、今まで数え切れないほど食べてきたぐらい好きなのだが、今日は違うのだ。

年明けから「ペントラッチャ」とか「たんぽぽラーメン」のような男のプライドと魂が込められた料理を食べてきたせいか、全国チェーンのマニュアル料理を空しく感じてしまう。料理の向こう側にある作り手の人生観が伝わってこない、そりゃそうだ誰が作っているのかも知らないし、誰が作っても同じ味なのだから。会計は二人で1400円、お腹に物は入ったけど、満たされない気持ちのまま店を出た。

せっかくの外食だったのに、このいまいち「損したような気持ち」をどうにかできないものか?と向かったのは近くにあるオラランティという洋菓子店。店内の片隅でお茶を飲む事ができるので、ショーケースのケーキを選んで待つこと3分、淹れたてのコーヒーと共に運ばれてきた漆黒のチョコレートケーキ。

なんて艶やかできれいなんだろうと、回して見てみようとお皿に触るとその冷たさに驚く。そういえば、さっきの寿司皿は常温だった、たったこの差で食べ始める時の緊張感が一気に変わった。
いや、食べなくても分かる。このケーキは絶対に美味い、皿の温度を意識するパティシエが不味いケーキを許すわけが無い。
もうなんだかワクワクしちゃってフォークを手に取りケーキにあてるとその柔らかさにまた驚く、この光沢、この温度でこの感触か!あぁ~、もう俺の心は完全にオリエンタルワールド、半ば昇天状態でケーキを口に運べば三途の川が見えてきた。
甘さ、ほろ苦さ、まろやかさ、芳醇な香り、全てが絶妙だ!なんだこのケーキ!?食うのがもったいねぇ!

小さな洋菓子店はちょっと味気ないぐらいのシンプルな内装だけど、逆にそれが「味で勝負してます」と主張しているかのよう。そして期待を裏切らないこのケーキの美味さだ。うわぁ、やられた。パティシエに「やれるもんならやってみろ」って言われてるみたいだ。これに比べれば俺の仕事はまだまだだ、俺のアクアリウムはまだ常温の皿で出してる料理と同じ。至福と共に多くの事を学ばせてもらった、本当に楽しいひと時だった。

ケーキ2品とコーヒー2杯で1400円、奇しくも寿司屋と同じ値段だった。お金の価値は使い道によってここまで変わるものか?俺はセブンスでお金を使ってくれている人にその価値を提供できているんだろうか?なんかすげぇ悔しいなぁ、もっと精進しよう。